2023-11-1 広報こもろ2023年11月号に記事が掲載されました。
詳細内容は、こちらです。 → https://www.komoron.com/komrowine50th08/
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創業者の藤田正人氏は、神奈川県の高校で地理など社会科の教員を30年以上勤めた。
「生きた授業をする」ために世界60カ国以上を訪れ、各国でワインに出会い、その美味しさとともに、風景の美しさ、取り巻く文化に魅せられ、ワイン造りに残りの人生をかけてみようと決意した。
単一品種から造るブルゴーニュのワイン造りを目標に全国各地の圃場を探しまわり、小諸市糠地区にある傾斜地の景色を見た瞬間に
「ここならピノ・ノワールやシャルドネの美味しいワインができる」と直感し、当地でブドウ造り、ワイン造りをスタートさせた。
〈藤田さんが思わず「Destiny! ここだ!」と叫んだという日向山の圃場〉
2021年10月には、醸造所を建設してワイナリーをオープンさせ、念願の自家醸造ワインを完成させた。
日本とフランスでは気候風土が異なるため、出来上がるワインの味わいはもちろん違う。ブルゴーニュのワインに感銘を受けた藤田さんであったが、ブルゴーニュの真似をするのはなく、小諸市糠地区ならではの美味しさが感じられるようなワインを造りたいとの思いで醸造に取り組んでいた。
その2021ヴィンテージが、藤田さんの手による最初で唯一のワインとなった。
そんな藤田さんに初めて出会ったのは2021年12月のことだった。
藤田さんは、当時私が通っていた千曲川ワインアカデミーの第1期生で、7期生の私にとって大先輩にあたる。そのアカデミーから、ドメーヌ・フジタで研修生を募集しているという案内を受けたのだ。
お会いした藤田さんは話好きな方で、初めての自社醸造でよいワインができたと、目を輝かせながらワイナリーや圃場を案内してくださった。ブドウ栽培やワイン造りに関していろいろな話をしてくれ、一方的に教える関係ではなく一緒にやろうと誘ってくださった。
初めて出会った私にそのような姿勢で接してくれる、非常にオープンな方という印象だった。
小さいながらも最新の設備やタンクが並ぶ醸造場は、藤田さんが7年がかりで夢を実現させた自慢の場所であった。
小諸市糠地区でブドウ栽培を始めることを決意し、荒れ放題だった耕作放棄地を次々と開拓してブドウ畑に変えた苦労は並大抵でなかったであろう。
醸造場にしても、建屋の設計、設備・機器の手配、資金の調達、醸造免許の取得、醸造実務の研鑽、更には出来上がったワインを売る販路の開拓など、気の遠くなるような努力を積み重ねて実現してきたものだ。
温厚で話好きな藤田さんの、どこにそんなパワーがあるのかと感銘を受けた。
ところが、出会いからわずか4ヶ月後に思わぬ事態が待っていた。
2022年3月、藤田さんが体調を崩して急遽入院することになったという知らせを受けた。
これから畑の作業が忙しくなるタイミングであり、春先の剪定を始め藤田さんが丁寧に整えた畑をそのままにしておくことはできない。藤田さんから電話で「退院するまでの間、畑の面倒を見てくれないか」と相談された。
当時私は名古屋に自宅があり、ドメーヌ・フジタには車で5時間以上かけて通っていたのだが、秋ごろには復帰できるだろうという藤田さんの言葉を受けて、半年くらいなら頑張ってみようと引き受けた。
しかし、藤田さんの病状は悪化する一方。5月後半に「復帰できても以前のように仕事ができる自信を持てないので、ワイナリー全体を引き継ぐ気はないか」と打診された。
「ドメーヌ・フジタの畑の状況を一番把握してくれているから」藤田さんからの託された思いを胸に、悩んだ末に引き受けることを決意した。
私は、現在、藤田さんが果たせなかった夢を自分の手で実現することを目標にしている。
2022年は、畑を途中で引き継いだ混乱と私の経験不足、更には天候不順によりブドウの収穫が前年の半分以下に激減した。畑作業が手一杯でとても醸造まで考える余裕はなく、近隣のテールドシエルに無理をお願いして全量を醸造してもらった。
2023年は前年の反省を踏まえて収量が多少回復した。ピノノワールとソーヴィニヨンブランは順調であったが、シャルドネが散々な結果に終わり、ブドウ栽培の難しさを思い知らされた。この年、自社醸造を再開させることができた。
一歩ずつではあるが、藤田さんの2021年のレベルに近づけられるよう試行錯誤している。
藤田さんの亡くなる少し前、「是非ともブルゴーニュへ行ってみて欲しい。ブルゴーニュに行けば、私が目指してきたものがより良く理解できるはずだから」という言葉をいただいた。私はそれをまだ果たすことができていない。
この2年間、実に多くの人がドメーヌ・フジタを応援し手を差し伸べてくださった。
藤田さんの思いを実現するだけでなく、応援してくれている沢山の方々の期待に応えるためにも、より良いブドウ、より良いワインを造ることができるよう、努力して参ります。
〈2022年3月末、2021ヴィンテージの瓶詰作業が最期の思い出となった〉
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会社名:株式会社ドメーヌ・フジタ
風吹く糠地の小さなワイナリー
設立: 2019年1月11日
資本金:900万円
代表取締役:織田 徹
住所:〒384-0809 長野県小諸市滋野甲4162番地221
HP:https://kaze-nukaji.com
Mail: domainefujita@gmail.com
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2016年 小諸市糠地区日向山で16aの耕作放棄地を開墾、ピノノワール350本を定植
2016年 小諸市井古区下寺平で30aの耕作放棄地を開墾、シャルドネ400本を定植
2017年 小諸市井子区下寺平で30aの耕作放棄地を追加開墾、ピノノワール350本、シャルドネ350本を定植
2018年 小諸市糠地区清水端で30aの耕作放棄地を開墾、ソーヴィニヨンブラン750本を定植
2019年1月 株式会社ドメーヌ・フジタ設立
2019年3月 マザーバインズ長野醸造所(長野県上高井郡高山村)で委託醸造の最初のワインが完成
2019年4月 日向山ピノノワール2018、井子シャルドネ2018をリリース
2020年4月 日向山ピノノワール2019、井子シャルドネ2019をリリース
2021年4月 商品ラインアップを拡充、Gettaピノノワール2020、井子シャルドネ2020(樽)、清水端ソーヴィニヨンブラン2020をリリース
2021年9月 自社ワイナリーが完成、醸造免許取得
2022年3月 自社ワイナリーで醸造したファーストヴィンテージ(2021VT)が完成
2022年10月 現オーナーに経営承継
2023年3月 創業者 藤田正人氏(故)が自ら手掛けたファーストヴィンテージ 4種(Gettaピノノワール2021、井子シャルドネ2021(樽)、井子シャルドネ2021、清水端ソーヴィニヨンブラン2021)をリリース
2023年11月 2021VT残る1種(日向山ピノノワール2021)をリリース
2024年3月 ワイナリー隣接の家屋をリフォームして試飲スペースを整備
2024年3月 小諸市糠地区日向坂で35aの圃場を開設、ピノノワール300本を定植
2024年5月 コーポレートロゴを刷新して使用を開始
2024年6月 井子シャルドネ2022(樽)、清水端ソーヴィニヨンブラン2022をリリース
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ドメーヌ・フジタのブドウ畑は、長野県小諸市糠地区・井子区の標高840~900mの浅間連山
南麓にあります。年間降水量1,000mm程度、陽当たりや水はけが良く、昼夜の寒暖差が
大きいブドウの栽培適地です。浅間山、富士山から八ヶ岳、蓼科山、美ヶ原、槍穂高はじめ
北アルプス連峰を望む4つの圃場は、春夏秋冬の美しい風景で、生きる力を与えてくれます。
2014年開墾、2015年春ピノノワール定植
遠景は千曲川を越えて対岸の御牧ケ原台地、蓼科山、美ヶ原
粘土質及び黒ボク系土壌、標高880m付近
2014年開墾、2015年春シャルドネ定植、2020年春に拡張しシャルドネを追加定植
遠景は浅間山連山、黒ボク系土壌、標高850~860m
2016年開墾、2017年春ピノノワール、シャルドネ定植
遠景は穂高、槍などの北アルプス連峰、黒ボク系土壌、標高840~850m
2017年開墾、2018年春ソーヴィニヨンブラン定植
真南に臨む富士山に向かって畝が作られている、南東に八ヶ岳
圃場の真ん中に立つ柿の木がランドマーク、粘土質土壌、標高890~900m
2024年春ピノノワール定植、周囲にさえぎるものがなく四方の山々を見渡せる
圃場の片隅にはりんごやプルーンの果樹があり、花や果実を楽しませてくれる
黒ボク系土壌、標高850~860m
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